2011年02月23日
ユーザビリティに勝るもの
柴田優子
インフォメーションアーキテクト
お客様から必ずいただくサイト構築の要望は、「ユーザービリティのよいサイト、使い勝手のよいサイトにしたい」ということ。もちろん、そうあって当たり前なのですが、他にも、サイトが成果を上げるために重要なことがあるのではないかと思います。
ユーザーが、サイトでアクションを起こす。
その背景には、ユーザーが「そうしたい」と思う意思があります。
コンテンツに夢中
話が少々飛びますが、以前、60代の母宛に叔母から宅配便が届いたことがありました。中に入っていたのは、韓流ドラマブームの火付け役になった某ドラマのDVDボックスセット。このドラマに夢中になった叔母が、「面白いからぜひ見てちょうだい!」と、自分が見終わったDVD一式を送ってくれたのでした。
当時、我が家でDVDを見るには、外付けのDVDドライブをノートパソコンにつなぐか、DVD再生対応の家庭用ゲーム機をテレビにつなぐかの選択肢しかありませんでした。
テレビのスイッチを入れたらチャンネルを変えるだけ、ビデオの再生も録画もしたことがないという母なので、当然放っておいては見ることができません。
ちょうど週末で暇だったので、私が操作することになりました。
大きい画面で見られたほうがいいだろうと、家庭用ゲーム機をテレビにつないで見ることにしました。そこからは、ひたすらドラマ鑑賞。一枚見たら次を、さらに次をと、時間の許す限りドラマ鑑賞が続きました。こんなにテレビ画面を見続けた母を、これ以前もこれ以後も見たことがありません!
しかし、全20話を2日間で見終わることはできず。平日中は操作を代行してあげることもできないので、とりあえず操作手順のメモを渡しました。
「見たい」という意思の力
月曜夜には、「見たわよ!続きを!」と嬉しそうに話す母がいました。
操作できたんだ!と、まず驚きました。
テレビとゲーム機の両方の電源を入れて、テレビで外部入力を選択し、ゲーム機が立ち上がるのを待ち、ゲーム機にディスクをセットし、と使い勝手という点では、普段の母には難易度が高い操作手順です。にも関わらず、「続きを見たい」という一心で、メモを見ながら一人で操作したのです。
これがしたい!という意思に勝るものはないのだなと、この時つくづく思いました。
ユーザビリティ向上と、コンテンツ・商品の強みを一緒に考える
ユーザビリティ向上で、ターゲットユーザーはサイトでの目的が達成しやすくなります。60代が多そうだったらデフォルトのフォントを大きくする、ポイントを強調する、購入ステップを短くするなど、一つ一つの構成、要素を見なおしていきます。
こうした改善で、もちろん成果は上がります。しかし、ユーザビリティ上の難点があるにもかかわらず成果が出ているサイトも、世の中にはあるのではないでしょうか。そこには、このサイトでなければダメなんだとユーザーが思えるコンテンツや商品が存在しているはずです。
商品の使用イメージを美しい写真で紹介する、製作者の思い入れをストーリーとして語る、実際の購入者の声を伝える、商品の特長を印象的なコピーで紹介する等、ユーザーの心に響くものが何かを、こちらも一つ一つ考えていきます。
「ユーザービリティのよいサイト、使い勝手のよいサイトにしたい」、そのご要望にお応えしつつ、ユーザーが関心を持つコンテンツや商品等の強みをお客様と一緒に探すこと、その強みをさらに魅力的に表現することも、私たちの仕事の一つです。
ユーザビリティ向上と、コンテンツ・商品の強みアピール、この2つが一緒になってこそ、ユーザーがアクションを起こしてくれるサイトに近づいていくのだと考えます。
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