自社ツールを公開しよう!~前編「アイデアを形にする5つのポイント」~アイデアマンズアイデア(21)

2007年10月11日 | 広報・PR・イベント運営担当

2007年10月11日

自社ツールを公開しよう!~前編「アイデアを形にする5つのポイント」~アイデアマンズアイデア(21)

宮永 邦彦
アイデアマンズ株式会社

「こういうちょっとしたツールがあればいいのに」
「この社内用ツール、製品化できないかな?」

 IT業界に携わっていると、普段からこういったことを感じる場面が多いのではないでしょうか。ところが結局、想像だけで形にできず終いというケースが圧倒的に多いのも現実です。

弊社アイデアマンズ株式会社( http://www.ideamans.com/ )では、

・Movable Typeの携帯対応プラグイン「ケータイキット」(商用プラグイン)、
・Webページのキャプチャをとる「WebScan」(シェアウェア)、
・ブログやWikiなどの編集をサポートする「AreaEditor」(フリーウェア)、
・その他Movable Typeのプラグイン

 など様々なツールをWebサイトで提供しています。中でも、WebScanやAreaEditorは数万本がダウンロードされるロングセラーとなりました。

 本当はこれら公開済みのツール以外にも数多くのアイデアがあって、形にできたのはごくわずかというのが実際のところです。しかし、ツールの開発・公開を通じて、アイデアを形にするときの落とし穴や、重要なポイントに気づきましたので、今日はアイデアを中途半端に終わらせず、しっかり形にするための 5つのポイントとしてお話しします。

その1「とにかく小さく作る」

 ツール作りで大切なことは、最初はコアになる機能を絞りに絞って、とにかく小さく作ることです。はじめから小さくまとめると言うと、なんだか消極的に聞こえますが、実はいちばん大切なポイントです。

理由は簡単で、「他にもやるべき作業はたくさんあるから」です。

 特に、実際に動くツールがすでにできていて、社内で使われていたりすると「あと少しで公開できる」と感じがちですが、コアになる機能を形にするというのは、実ははじめの一歩でしかありません。

 ツール制作以外にも、インストールや設定のためのユーザーインターフェースを用意したり、導入までのヘルプやFAQといったドキュメントを書き起こしたりなど、当初思っている以上の作業が発生します。ツールが多機能になればなるほど、そういった周辺作業は加速度的に膨れ上がっていきますので、そういった作業が発生することを見越して機能を絞るべきなのです。

その2「使いやすさを作る」

 コアとなる機能は絞りに絞りますが、その分「使いやすさ」には充分に労力をかけます。親切なマニュアルや分かりやすいユーザーインターフェイスを通じて、誰でも簡単に導入することができ、すぐにコアになる機能を試せるように促します。ユーザーに使ってもらうためには、シンプルで使いやすい、ことが最優先です。

 たとえば、Webページのキャプチャツールの「WebScan」では、キャプチャー機能自体よりも、インストーラーを用意して、Internet Explorerのツールバーに組み込み、ワンクリックで使えるようにすることに力を注ぎました。その後、同じ機能を持つフリーウェアがいくつか出ましたが、有償であるにもかかわらずWebScanが選ばれ続けるのはそういった機能の見せ方や使いやすさが功を奏していると自負しています。

その3「ライバルなんていない」

 ツールの企画を考えているとどうしても欲が出てきて、最初のバージョンからあれもこれもと機能を盛り込みたくなります。小さくまとめすぎると、「類似ツールが出てアッという間に陳腐化するのでは?」という不安にも駆られ、なるべく多機能にしてセーフティリードを保ちたい、と考えがちです。

 もちろん、競合が現れたときのことを想像しておくのは大切なことです。しかし実際のところ、今まで世間に出回っていない種類のツールはそれだけ市場が小さいということでもあり、リリースしてもしばらくの間は競合が出てこないことがほとんどです。

 あれこれ心配して機能が複雑になった挙句、結局頓挫したり、形にできずに終わってしまうのがいちばん無意味なので、むしろ「ライバルなんていない」と開き直って、まず形にする勢いも大切です。

 Movable Typeで携帯サイトを作るためのプラグイン「ケータイキット for Movable Type」も企画当初は思い入れが強すぎて、「すごいニーズがある!」と意気込んでいました。幸い実際にニーズがあって、多くのお客様に導入してもらうことができましたがまだ直接の競合商品は他に出ていません。そういうものです。

その4「スタンダードに従う」

 実際にツールを開発するときは、奇抜な方法は採用せずに徹底的にスタンダードなやり方を踏襲します。インターフェースや設定方法など、場合によってはスタンダードな手法ではなく、つい独自の方法で作ってしまうことがありますが、多少開発が遅れてもスタンダードなやり方をじっくり調べてから取りかかるべきです。

 ユーザーにとって分かりやすいのはもちろんですが、奇抜なやり方はOSやプラットフォームのバージョンアップに振り回されることが多く、メンテナンスに大きなコストがかかることになります。

その5「サポートは発生する」

 無償公開でもサポートは必ず発生します。「無料で公開しているものだからノーサポートで」という考え方もありますが、個人で公開しているならまだしも、会社で公開する場合はユーザーの疑問を無視できません。

 公開したツールは、期待して試してくれたユーザーがきちんと使えるようになってはじめて完成に至ります。最初は嬉しくて問い合わせにも喜んで対応するのですが、サポートに時間を割いてばかりもいられませんので、そういった問い合わせ自体を減らす工夫を最初から用意します。

 前出の(1)から(4)は、そういった問い合わせを軽減するための方策でもあるのです。「小さく作って」おけば不具合が減り、「使いやすく」「スタンダードなやり方」で作っておけば、問い合わせ数は自ずと減ります。

 以上、アイデアをどうツールに落とし込むか?という課題に焦点を当てた5つのポイントでした。

 ツールは便利さという実利を伴うため、訴求力が大きく、他の方法ではなかなか代替できないPR効果があります。本来であれば有償にしてビジネス化したいところですが、そのためにリソースを割いて本格的な営業をするのも困難だったりします。そこで敢えて無償公開することで、会社や個人の認知度を高めるバーチャルな広報マン・営業マンとして機能させ、「待ちの営業」を強力にサポートしてもらうという手法も有効です。

 またIT業界で働く多くのビジネスマンは普段から有志によって提供されているツールやノウハウによって作業を効率化しており、そのツールが仕事の一端を支えてくれています。自分達のツールを無償公開することで、今まで様々なツールによって受けてきた恩恵を社会に還元することに繋がります。

 次回はニーズの探し方や、ツールの公開をどのようにしてPRや営業に活かしていくか、というテーマでお話したいと思います。

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