2007年05月14日
携帯電話に今、何が起きているのか? ~ 転換期を迎える携帯業界のビジネスモデル~
佐藤 文彦
株式会社イー・エージェンシー
番号ポータビリティとGoogleで激動期を迎える携帯業界
2006年は携帯電話を取り巻く環境が激変した年だった、と振り返ることが出来る。
ひとつは、2006年10月24日、携帯電話番号を保持したまま、携帯会社を切り替えることができる「MNP」(Mobile Number Portability)が始まったこと。
ふたつめは、2006年7月にauの「ezweb」ポータルサイトに、Googleの検索窓が付いたこと。
既に実施されている「パケット定額制」と「MNP」「検索エンジン」、これらの相乗効果で、携帯会社は従来のビジネスモデルの方向転換を迫られている。
従来の携帯会社におけるビジネスモデルは、通話料に加えて、ネット・メール使用によるパケット料、そして公式サイトの情報料回収代行手数料によって成立していた。
(※ここでの公式サイトは、携帯キャリアのポータルサイトに登録されているサイトのことを指す。ポータルサイトに登録されていないサイトは勝手サイトという)
情報料回収代行とは文字通り料金をサービス事業者に代わって徴収することだ。公式サイトの有料サービスを使うと、その料金が携帯電話代が一緒に請求されるが、これが情報料回収代行であり、その手数料としてサービス事業者から携帯キャリアに手数料を支払われる。
たとえば、1曲210円の着うたをダウンロードすると、その内約19円がサービス事業体から携帯会社に回収代行手数料として支払われることとなる。(手数料9%の場合)
情報料回収代行は、公式サイト内のサービスを使ってもらうことが大前提としてあるので、ユーザーを公式サイト内に囲むために、基本的にポータルサイトにある検索窓は基本的に公式サイトの中だけを検索対象にしていた。勝手サイトの中に無料で有意義なサイトやサービスがあっても、携帯会社のポータルサイトから辿りつくことが難しかった。
勝手サイトでのビジネスでは携帯キャリアにはお金が落ちてこないし、ユーザーが定額パケット制を導入していれば、パケット代で稼ぐこともできない。勝手サイトは、携帯キャリアのビジネスモデルにはあまり寄与しなかったのである。
新たなるビジネスモデルを模索する携帯分野
検索エンジンの採用により公式サイトと勝手サイトの垣根が徐々に無くなろうとしている。公式サイトにユーザーを囲って、お金を落としてもらう、という従来のビジネスモデルに限界が見えてきたのである。もっとも、携帯会社間にはまだ微妙な温度差があり、auだと公式ポータルサイトに検索窓があるのに対して、ドコモの場合だと、ポータルサイトのトップページからiメニューに入ってはじめて検索窓が姿を現す。
ただ、ユーザーを囲い込むことに執着すれば、MNPによりユーザーは携帯会社を乗り替えてしまうので、今よりも利便性が下がると言うことはない。つまり座して、ユーザーがお金を落としてくれるのを待つのではなく、積極的に新機軸を打ち出していかなくてはいけない状況にある。新年度になって各携帯会社が、事業戦略を打ち出したが、コンテンツによる収益を相当意識したものになっていた。自社コンテンツの魅力を上げることで、ユーザー流出を防くと同時に、コンテンツによる収益をビジネスモデルの中核に育てたいという思いが読み取れる。
・着うたフル定額、漫画、ゲーム - 携帯各社、コンテンツ収益増へ新展開
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0704/23/news023.html (ITMedia)
公式サイト・勝手サイトの垣根が無くなるにつれ、従来の企業におけるモバイルサイト戦略も大きく変化しようとしている。公式サイトでできなかったことを、勝手サイトで補完しようという動きである。
公式サイトは色々な制約が課せられてきたが、その中でも一番大きな枷と言えるのが「公式サイト以外へのリンクが貼れない」ことだった。ユーザーには公式サイト内で回遊してもらいたい、と考える携帯会社にとっては当たり前の戦略とも言えるが、このことにより、「広告バナーが貼れない」「勝手サイトへの誘導ができない」という事態を招いていた。
ある程度、知名度のある一般の企業において、ユーザーへの義務として公式サイトを出しているものの、やれることに限界があるので、ただ存在しているだけ、という状態になっていることも少なくない。でも、知名度があるので、月間に数百万PV~数千万PVを稼ぐという、「もったいない」状況だった。
ここまでの媒体力があるのであれば、まずは公式サイトと同じ体裁で勝手サイトを構築して、徐々にそちらに軸足を移していくということも有効だろう。公式サイトではできない広告掲載や、他の関連サイトへの誘導など、その効果は計り知れない。仮に公式サイトの2割、3割が勝手サイトに流れたとしても、十分やる価値はある。もちろん、それだけで今すぐ莫大な利益が発生すると言うわけではないが、サーバー費や運営費程度なら十分まかなえるくらいの収益を産むことは可能だ。
そしてモバイルはWebマーケティングが発揮できる媒体である
そしてもうひとつ押さえておきたいのが、いつも肌身離さず持っている携帯電話だからこそ、ユーザーの心理に直感的に働きかけるということ。つまり、モバイルサイトや携帯メールを使ったモバイルマーケティングが効きやすいのである。
「AIDMAの法則」という考え方がある。ユーザーの心理が、Attention (注意) →Interest (関心) → Desire (欲求) → Memory (記憶) → Action (行動)と移っていく、とする考え方だが、携帯メールの訴求力はもっと直感的で、極端なことを言えば、DとMが抜けて、注意を喚起されて関心を持ったらその場で行動を起こす、くらいの威力を持つ。
弊社イー・エージェンシーでは、「ハデMail」というサービスを始めたが、そのリリースの背景には、プッシュ型マーケティングツールとしてケータイメールをもっと活用していただきたいという思いがある。
・ハデmail
https://www.e-agency.co.jp/services/mobile_mail.html(イー・エージェンシー)
自社の媒体力にまだ気付いていない企業がたくさんあるが、携帯電話を取り巻くビジネス環境が激しく変わろうとしている今だからこそ、モバイル分野へ注力すべきと考える。
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