2007年03月23日
雑誌とネットのこれからの関係とは ~雑誌の付加価値を高めるネットの活用法とは~
宮永 邦彦
アイデアマンズ株式会社
http://www.ideamans.com/
雑誌に肉薄するネット広告費
2年前の2005年2月、ネットの広告費がラジオを上回ったという電通による調査結果が報じられました(「2004年日本の広告費」)。ネットに携わる者としてある種の感慨を覚えたものでしたが、2006年は早くも雑誌の広告費に迫り、2007年にはそれを上回るだろうという予想が出されています。ネットはいよいよ第三の広告媒体へと躍り出ることになります。
・ネット広告費、雑誌に迫る テレビなど4媒体は2年連続前年割れ
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0702/20/news083.html(ITmedia)
ネットでの雑誌業界の動き
ネット躍進の陰で当然ながら雑誌の危機を唱える声は高まり、事実、部数の減少や廃刊・休刊の知らせを耳にする機会が増えています。もちろん雑誌業界も手をこまねいているわけではなく、一部の媒体では比較的早い段階からコンテンツ力を活かしてネットに進出しようとする動きが見られます。なかでも目立つのは、ポータル化と電子化です。
特定の雑誌のポータルとしては、ファッション誌やライフスタイル誌にその動きが多く見られます。
・CyberCREA
http://www.cybercrea.net/
・ベルヴェデール-エル・オンライン
http://www.elle.co.jp/home/
また出版社が主体となり、複数誌にまたがるようなポータルを展開するケースもあります。
・日経BP社の総合情報ポータル
http://www.nikkeibp.co.jp/ (日経BP)
・Webデザインとグラフィックの総合情報サイト
http://www.mdn.co.jp/(MdN Interactive)
もうひとつは電子書籍の形でネット配信する流れです。特に携帯向けへのマンガ配信が好調で、大手出版社の取り組みも活発です。ソフトバンクモバイルも「Yahoo!コミック」内に用意された専用の電子コミックから、好みのタイトル1話分を情報料無料でダウンロードできるサービス「タダコミ」を開始します。
・デジマグ
http://dgmag.hobidas.com/(ホビタスbyネコ・パブリッシング)
・マンガカプセル
http://mangacapsule.jp/pc/(集英社)
雑誌のアドバンテージ
さて、雑誌に圧倒的なアドバンテージであり、ネットがマネをしにくい部分が、次のポイントです。
・媒体として読みやすい
・コンテンツの質と信頼性が高い
・コンテンツの蓄積がある
・権威がある
・どこでも誰でも読める
雑誌の収益構造を考えると、売上部数を増やすと同時に、広告枠を拡げ、その単価を伸ばすことが重要です。ところがネットでは「タダで読める」文化が主流になっており、部数という概念がありません。有料コンテンツは未だ模索の段階にあります。
そこでこういった雑誌のもつ強みをそのままネットで展開して新たな広告枠を創出したり、新たなフォーマットでコンテンツを復刻販売するのが順当な戦略になってきます。
雑誌販促のためのコンテンツマッチ
以上のように雑誌の強みをもって新たな領域に進出する動きとは逆に、もともとの売上部数を伸ばす動きも見られます。お馴染みのAmazonも雑誌販売に進出してますし、Fujisan.co.jpは明確に「雑誌のオンライン書店」を謳っています。
・雑誌のFujisan.co.jp
http://www.fujisan.co.jp/
一方で、特定の出版社・小売店と独立した「雑誌総合ポータル」もいくつか出現しています。これらのサイトでは、「ちょい読み」「立ち読み」として誌面や目次の一部をそのまま閲覧できる機能が備わっています。
・【magabon】雑誌のちょい読みOK!! 24時間、365日、最新マガジン情報をあなたに。
http://magabon.jp/
・【雑誌ネット】雑誌の総合情報サイト・雑誌検索・雑誌記事検索・雑誌中吊り・雑
誌発売日・雑誌出版社情報
http://www.zassi.net/
以前は雑誌だけが担っていた情報収集・発信の役割は、大部分をネットに取って代わられました。しかしネットの情報収集は細切れの情報を拾い集めて頭の中で編集する労力が必要であり、まとまった知識を得たいときには、誰かが編集して裏付けをとっている雑誌が効率的です。
自分がいま興味のあるテーマについて、特集や連載を組んでいる雑誌を賢く教えてくれるサービスがあればなぁ、と以前から感じていました。
上記のmagabonには、「情報先取りメール」という、チェックしている雑誌の情報を発売日前日にアラートしてくれる機能があります。これはほぼ定期購読している雑誌には有効ですが、「内容を見て買うかどうかを決める」雑誌については十分に機能しません。
そんな中、Fujisan.co.jpが面白いサービスをスタートしました。雑誌の目次をRSSで配信するサービスです。
・新刊雑誌の目次をRSS配信、オンライン書店「Fujisan.co.jp」が新サービス
http://www.nikkeibp.co.jp/news/it07q1/525721/(日経BP)
たとえばこの情報とソーシャルブックマークやRSSリーダーへの登録情報をマッチングさせることで、個人に対して雑誌のレコメンデーションをしてくれるサービスを構築できそうです。
また、あるページの中で、「この話題はこの雑誌でいま特集されています」という形で雑誌への誘導を計るコンテンツマッチング広告を、精度の高い形で実現できそうです。アフィリエイト広告としてブログパーツの形にしておけば、ターゲットメディアの販促として最大の効果が得られそうです。
これらの機能と「ちょい読み」「立ち読み」が組み合わせられると、読者にとっても便利であり、本屋に行って雑誌を探す手間を省けるのではないでしょうか。ぜひそういったマッシュアップの登場を期待したいものです。
もっと雑誌とネットの相互理解を
雑誌に限らず、なぜか紙媒体とネットの組み合わせを考えはじめると、発想が凝り固まってしまう傾向が強いように感じます。その理由のひとつは、紙媒体とネットの特性が微妙に似ており、混同される場面が多いことにあると思います。
そもそもネット上のコンテンツは、出版をモデルに発展してきた一面があります。
ネットで支持されているコンテンツの多くは、やはり読み応えのある新聞風であり、雑誌風でありながらも、これまで新聞や雑誌が担ってきた速報性の高い情報を提供する役割は、ネットが担っています。
その結果、「紙とネットはどちらが上か」だとか「紙媒体は絶滅するのか」といった二元論に陥りがちです。テクノロジーを見れば、もちろんネットは紙媒体は別物で、広い意味でのインタラクションこそがネットの持ち味なのですが、一般ユーザーの目から見れば、ネットはコンピューターで読める新聞、雑誌、あるいは刊行物の延長という認識に過ぎないのかもしれません。
ここで雑誌業界で決定権のある人が、一般ユーザーと同じ視点でネット上のコンテンツを雑誌の弟分のように混同していたりすると、雑誌とネットそれぞれの持ち味を活かした提案に理解を得られません。逆もまた然りで、雑誌の業界はネットとまるで違う商習慣で成り立っており、それを理解しているネット業界の人材は、そう多くありません。
雑誌とネットは近くて遠い存在であり、まだまだこれから相互の理解と、それによる大きな変化を迎えるビジネス領域なのかもしれません。
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