2006年04月13日
到来、セミプロマーケター時代 - ドロップシッピングの可能性
門田 康弘
アイデアマンズ株式会社
http://www.ideamans.com/
アフィリエイトの次なるステップ
米Amazonがアソシエイト(アフィリエイト)プログラムを始めてはや10年。日本でのアフィリエイト市場は2005年で約315億円、2008年には1,000億円を超える規模に成長しました。
アフィリエイトがここまで成長した大きな要因のひとつには、サプライヤーにとって初期費用が少なく、費用が明確に予測できたこと、またアフィリエイターにとっては無料で始められながら報酬を得られることが両者にとってノーリスク・ローコストというWin-Winの関係を生んだことがあげられます。
現在、アメリカのネットビジネス市場ではアフィリエイトに次ぐ新たな販売チャネルとして「ドロップシッピング」が勢いづいています。日本でも昨年の暮れあたりからネットビジネスの新たな金脈について高感度のアンテナをもつブロガーや、海外在住のマーケターによってドロップシッピングついて紹介されることが多くなりました。
紹介から仲介へ
ドロップシッピング(Drop-shipping)とは端的にいうと、「ネットショップが在庫をもたずに商品を売る」ビジネス手法です。現在のネットショップでは、顧客から注文を受けた場合、自分が持つ在庫の中から商品を配送しますが、ドロップシッピングでは、ネットショップの代わりにメーカーや卸売業者が在庫を管理して、直接顧客へと配送します。ネットショップは顧客から受けた注文の情報(品番・数量・配送先など)を卸業者にオーダーすることで、在庫を抱えることなしに商品を販売できるのです。
在庫を持つことなく商品を紹介し、利益を得るという点についてはアフィリエイトと似ていますが、アフィリエイトは商品を紹介して予め決まった少額の報酬を得る「紹介・広告業」であるのに対して、ドロップシッピングではあくまでも商品を販売し大きな利益を得る「仲介・販売業」であり、販売価格や利益率を販売主が決めることができます。
ドロップシッピングがもたらす 三者のメリット
「無在庫販売」であることは、従来のネットショップオーナーにとっては非常に魅力的です。商品の梱包や配送は日々の業務を圧迫し、物理スペースの確保も常日頃の懸念材料です。ドロップシッピングは、そうしたフルフィルメント部分の業務の負担をなくすことで、営業やマーケティングに専念できるという恩恵をもたらすことでしょう。
また、もともと営業力に長けていて集客力のあるサイトやメルマガをもつアフィリエイターにとっては、従来の営業手法や体制を大きく変えることなく利益を上げるチャンスの到来といえるかもしれません。
さらに、サプライヤーにしてみれば、ドロップシッピングはアフィリエイトのような口コミに似た販路を持つことが可能になります。これは、ロングテール現象が示す新たなビジネスモデルに対応することができる「個人による販売チャネル」を確保することにほかなりません。
新たな懸念材料も
一方で、新たにドロップシッピングによるネット販売をはじめるアフィリエイターや事業者にとっては、「販売者責任」という新たなリスクを背負うことになります。ドロップシッピングは販売業であるため、販売に関する責任は、個人であれ販売者が持ちます。商品の返品やクレームは、販売者が対応しなければいけないし、ときには損害賠償の対象となるのです。
また、顧客の注文を受けるということは、重要な個人情報を取り扱うことにもなります。漏洩・流出・盗難などの事件が、他人事ではなくなるということを自覚しなければなりません。
メーカーにとっては新たな販売チャネルをもつことが魅力であるものの、小口顧客を多数持つことより生じるコストにどう対処すべきかといった新たな懸念材料も生まれます。また、信頼関係で成り立っていることが少なくない日本の商習慣において、流通の仕組みを大きく変えることは従来の取次店との間に軋轢を生む可能性がないとは言い切れません。
動き出した日本のメーカー
とはいえ、もともと商品や企画自体が新しく、マニアックな商品を持つニッチ向けの小規模メーカーにとっては、こういったデメリットもそれほどのリスクにはならないでしょう。また、Amazonのような成功例をもつアフィリエイトに似た手法でもあり、それほど冒険的な新ビジネスとは判断されないかもしれません。
少数ながら、現在日本でもいくつかドロップシッピングの実施例が出始めています。
・ecosec
http://c01.wx0.net/?c=32932&m=1973&h=6a24b8975c
ドン・キホーテをメインとする豊富な仕入ルートによる商材を提供。ecosecが配送、在庫を一括管理しています。
・フラワーシティ
http://c01.wx0.net/?c=32933&m=1973&h=051ab364f9
ネットショップを代理店として出店。卸値での仕入取引や、販売価格の設定などもネットショップ管理画面で設定可能です。フラワーシティのドロップシッピング機能は下記パッケージによって構築されています。
・SellingClub(セーリングクラブ)
http://c01.wx0.net/?c=32934&m=1973&h=13921105dc
今後、扱える商材が増えていけば、シチュエーションやユーザーターゲットをより厳選したセレクトショップを作ることが容易になるでしょう。例えば、ドン・キホーテの商品の中からさらにマニアックなものを厳選した「プチ・ドンキホーテ」や東急ハンズとLOFTを融合した最強の雑貨店「hands-loft.com(?)」などのネットショップを運営する個人が現れるかもしれません。
ドロップシッピング応用編
無在庫・卸値での取引であるという利点を別のかたちで活用している例もあります。下記のサイトでは、無地のTシャツやカップなど完成品に近い仕掛品が用意されており、ユーザーが登録した画像を組み合わせ、同サイト内のショッピングページにオリジナル商品として陳列することができます。注文が入ると、ユーザーが設定した売値から仕入れ値を差し引いた額が利益として振込まれる仕組みになっています。いわば販売ではなく商品企画に重点をおいたドロップシッピングシステムといえます。
海外の事例
・Cafepress
http://c01.wx0.net/?c=32935&m=1973&h=e39a3d1815
・Shirtcity
http://c01.wx0.net/?c=32936&m=1973&h=525329d019
・Spreadshirt
http://c01.wx0.net/?c=32937&m=1973&h=06fb3015a8 (日本語に対応)
国内の事例
・UPSOLD
http://c01.wx0.net/?c=32938&m=1973&h=47845c5603
・ClubT
http://c01.wx0.net/?c=32939&m=1973&h=02ba6c0a92
商品企画という意味では、複数の商材を組み合わせ、全く別の商品として売ることも可能です。例えば、服装から映画チケットなどのアイテム、ランチやディナーといった時間や場所を商材として仕入れ、最高の一日をパッケージ販売する「デート・コンサルティング」といったサービスも可能性としてあり得ます。
CafepressやSpreadshirtなど海外のサイトでは、PDFデータをアップロードすることにより書籍も販売することができ、ビジネスのノウハウやプログラムスキル、果ては「儲けの秘訣」など情報商材を扱うビジネスに多く活用されています。
ドロップシッピングの強みはニッチ市場へのリーチ力であり、値段の基準が曖昧で無形の原材料を使用した商品であればあるほど独自性は増し、ドロップシッピングで売ることの効果も高まります。
無形の商品といえばシェアウェアなどのソフトウェアも、価格というものの根拠を突きつめることが難しく、開発とは別の販売ノウハウが求められる商材ですので、ドロップシッピングの手法が有効かもしれません。
まとめ
以上、ドロップシッピングとはなんなのかをアフィリエイトや従来のECと比較しながら紹介しました。アフィリエイトが依然、拡大期にあることは冒頭で述べたとおりですが、アフィリエイトで得たノウハウをほぼそのままの形で応用できるドロップシッピングは、多くの有力アフィリエイターたちが次に挑戦するステージとして注目を集め、普及の速度を高めていくように感じています。
さらに、海外での成功例が日本の企業にとって好材料となり、ドロップシッピングも近いうちに拡大期を迎えることが起こり得ると考えています。
ドロップシッピングが急成長を前提とした導入期にあるならば、ドロップシッピングのプレーヤーであるサプライヤーやブロガー達よりは、ドロップシッピングの導入に必要な情報をより多くつかんでビジネスモデルを考案した者が先行者利益を得る時期にあるのではないでしょうか。したがって、
・メーカーや卸業者、商材の仕入れルートを持つ商社系企業
・有名なブログ、メルマガや携帯コンテンツを数多く保有するポータル系企業
・多くの商品を比較・評価し、マッチングさせるノウハウをもった価格比較系サイト
やオークションサイト
これら流通やトラフィックにおいてアドバンテージを持つ企業が大きく動き出す日は、私たちの予想を裏切るスピードでやってくるのかもしれません。
(参考書籍)
・日本人が知らなかったネットで稼ぐ新手法 ドロップシッピング(富田 貴典 著)
http://c01.wx0.net/?c=32940&m=1973&h=64f98960a2
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