コミュニケーションをデザインするということ

2011年9月9日 | 広報・PR・イベント運営担当

コミュニケーションをデザインするということ

大藪祐一
インフォメーションアーキテクト

 

先日お客様とお打合せをしていた時の話です。そのお客様は結婚式場を運営されている企業のウェブ担当者の方で、ウェブからの来場予約を増やすためにサイトのパフォーマンスを上げるべく日々奮闘されています。
お打合せ中に「フォームの項目を減らしてもっと簡単にしちゃえば来場予約が増えるんじゃない?」という発言が飛び出しました。その時はそのトピックがそれ以上膨らむことはなく、フォームの項目を減らすことはありませんでした。

小さな変化が生み出す大きな変化 - 部分改善による最悪なシナリオ

もしこの発言から入力フォームを簡易なものにしたとしたらどんなことが起きていたか想像してみましょう。

問い合わせのハードルを下げたことでウェブからの来場予約が増加することは間違いないでしょう。しかしハードルを下げるということは同時に誰でもその敷居を跨ぎやすくなることでもあります。つまり運営する側にとって好ましくないユーザーも増えてしまう可能性があります。その結果、来場予約はしたけどキャンセルが増えたり、来場後の現場でのクロージング率が低下したり、どうにか契約まで漕ぎ付けたとしても激しい値切り交渉による顧客単価の減少で、全体の売上が減少という結果を生み出すかもしれません。

そしてこの結果は目に見える売上数値として上層部に報告されます。上層部はサイト運用のことはもちろんのこと、現場のことまですべてを把握しているわけではありません。仮にその数値の上辺だけで判断されたら、上層部は「ウェブはこんなに頑張っているのに現場の努力が足りない!」なんてことを言い出だしかねません。そんな上からの叱咤激励で現場もしばらくは頑張るのですが、そんなことが長く続くはずもなく、やがて疲弊してきます。

そして現場の士気が下がるとサービスの質が下がります。場合によっては質の落ちたサービスを受けた人がソーシャルメディアを通じてその不満を拡散するかもしれません。この悪い評判が最後にはウェブからの問い合わせに影響してきます。せっかく増加したウェブからの来場予約もウェブ上に広まった悪い評判のせいで減少するかもしれません。

 

昨日の解決策が今日の問題点に

今のお話はフォームの項目を簡易にするという小さな変化がもたらす最悪のシナリオを想起したものです。昨日の解決策が今日の問題点になった例であり、全体に及ぼす影響を無視して目先の部分改善に取り組んだ結果でもあります。少々大げさな話に感じられるかもしれません。しかし実際に自社のウェブサイトを運用されている方やアクセス解析に取り組まれている方ならありえなくはない話だということがご理解いただけるはずです。一度この負の連鎖に陥ると根本的な要因が特定しづらく、解決策も見いだしづらくなってきます。

 

お互いにハッピーになれるためのコミュニケーションを

住宅メーカーや美容整形クリニックなども同様ですが、実際に足を運んでもらい、契約が完了した時点で売り上げが発生するモデルでは、ウェブだけのシナリオだけではなく、来場予約後や契約に至るまでの全体の流れを見据える必要があります。

ECサイトだったら一度の購入だけで終わらせるのではなく、その後もリピートして購入してもらうためのアプローチが必要でしょう。BtoBのサイトなら問い合わせ後の営業フローを踏まえた上で、見込み客を獲得するために何ができるかを考えなくてはなりません。

大事なことは、ユーザーの行動の全体像を描いたうえで、ユーザーのマインドに適したコミュニケーションをデザインできているかという視点です。ただ単に目先のコンバージョンのみを追いかけるだけではなく、最終的なビジネスゴールを達成するためにもこの視点は重要です。

どんなユーザーに自社の商品やサービスを利用してもらいたいか、そのユーザーはどんなタイミングでこのサイトに訪れるのだろう、どんな検索ワードでやってくるのだろう、どんな情報があれば満足してくれるのだろう、購入後(契約後)、ユーザーに対してフォローできることは何だろう、そのような仮説を立てながら検証を行い、改善していくという継続的なプロセスが今後ますます重要になっています。

最近ではアクセス解析のツールも進歩しており、サイト内のユーザー行動を定量的に把握することも可能になってきました。ユーザーテストによりユーザー行動を観察する重要性は言うまでもありません。調査した結果、改善すべきはサイト内ではなくユーザーの応対をするスタッフの質を向上させることかもしれません。

企業とユーザーがお互いにハッピーになれるためのコミュニケーションを、全体を俯瞰してデザインしていくこと。この視点は、企業がユーザーとどのように向き合っていくかを真剣に考えることが問われている時代になったということを教えてくれます。

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