就活生が本当に見ているもの–失敗しない「新卒サイト」の作り方とは?

2009年10月8日 | 広報・PR・イベント運営担当

就活生が本当に見ているもの–失敗しない「新卒サイト」の作り方とは?

奥井 夏子
インフォメーションアーキテクト

4月になり、街を歩くとフレッシュな新入社員の姿を見かけるようになりました。また、早い企業では翌々年度の採用活動について考える時期でもあります。

さて今回は、新卒者向けの就職情報サイト(新卒サイト)を検証しました。被験者は、就職活動中の大学生5名(男女混合)です。学生たちが普段使っている「リクナビ」「マイナビ」サイト内で、どの要素が見られ、どの要素が見られないのかを、アイトラッキングツールを使って分析します。なお学生たちには調査の目的は明かされておらず、あくまで普段通りの情報収集をしてもらいました。

今回の調査にて、被験者たちに共通するある傾向が見えてきました。次年度の新卒サイトを作る際にご参考いただければと思います。

新卒学生に「刺さる」写真

他サイト同様、今回の調査においても、学生たちは画像に注目していました。以前、本コラムの中で「転職求人サイトにはどんな画像が適しているのか」という調査をしましたが、転職サイトに限らず、新卒サイトにおいても、サイト利用者が好む画像は「働いている社員の写真」でした。事後のインタビューにて、学生たちは「実際の職場の雰囲気を見たい」と答えていたので、入社後のイメージを可視化した写真は、彼らの惹かれる要素と言えるでしょう。

図1:オレンジの丸は視線が止まった場所を、線は視線の動きを、数字は視線が止まった順番を表す。丸が大きいほど、視線の滞留時間が長い。被験者は働く社員の写真を中心に視線を走らせている。文章は読まれておらず、経営者の写真も見られていない。

図1は、学生D(男性)の視線の動きです。職場の写真を中心に視線を走らせ、すばやくこの会社の雰囲気をつかもうとしていることが分かります。その脇にある説明文に関しては、全く視線を落としていません。

さらに注目したいのは、働く社員の写真(写真上段)は注視されていても、経営者の写真(写真下段)は見られていないということ。「経営者の写真はあまり見ない」――これは学生Dだけでなく、調査中のすべての学生に共通する傾向でした。

新卒サイトで、経営者の写真を大きく取り上げているサイトも少なくありません。ただ新卒学生へのアピールを考えた場合には、どんな写真を使うかについて再考する必要がありそうです。

新卒サイトならではの“アピール写真”

新卒サイトならではの画像に惹かれるケースもありました。図2は、学生C(男性)の視線の動きです。

図2:採用説明会の写真をじっくりと見る被験者

この学生は、新卒説明会の写真を興味深そうに見ながら、「説明会でバイクに乗れるんだ」「説明会、私服でいいってことなんですね」と発言をしていました。

採用説明会は、新卒採用ならではの大きなイベントになりますが、意外と説明会の写真を使っている新卒サイトは少ないようです(今回のテストでは24社中1社のみ)。採用説明会の写真を上手に利用することで、新卒学生に向けて有効なアピールができそうです。

意外と不人気?「先輩社員の声」

学生たちが先輩社員の働く写真に惹かれる一方、新卒サイトでよく見かける「先輩社員の声」コンテンツを読みに行った学生は1人もいませんでした。人気のあるコンテンツと予想していただけに、これは意外な結果です。

学生たちにインタビューをしてみると、

  • (今回のテストに関わらず)こういうコンテンツはほとんど見ない。「やらせ」のような気もするし……。セミナーに行けば、雰囲気で伝わる。
  • こういうことは、セミナーに行って肌で感じたい。むしろセミナーには、(先輩社員の声など知らずに)まっさらな状態で行きたい。
  • 大体が「なぜこの会社に入ったか」というような話になっているが、聞きたいのは、その人が入社してどんな経緯で現在の仕事をしているのかということ(例:最初は何の仕事をして、次にどこに異動して、何年目にリーダーになって、など)。

などの声が聞かれました。

なお、図3で、先輩社員の声を注視した学生Cにインタビューをしたところ、「企画立案という文章」に惹かれたと答えています。ただしこれ以外の、先輩社員のインタビューには注意を払っていません。

図3:「企画立案」という文言に惹かれ、先輩社員にインタビューのうちの1つを注視している。ただし、残りの2つは全く見ていない

先輩社員の声は決して悪いコンテンツではありません。ただせっかく作ったコンテンツを新卒学生に読んでもらうには、コンテンツの内容や、そこへ誘導するためのリード文に注意を払う必要があります。

「新入社員がすぐに活躍できる場が欲しい」

今回の調査の中で、どの学生からもよく聞かれた言葉というのが、「入社してすぐに自分が活躍できそうな職場がいい」というものです。

自分が活躍できそうな場とはどういうことか、とたずねると、「新卒でも面白そうな仕事ができる」「新卒でもクリエイティブな仕事を任される」などという答えが返ってきました。学生たちは、「徐々に仕事を覚えて、いずれは……」というよりも、「早い段階から会社の中核を担う仕事をしたい」という気持ちが強いようです。

図4は、学生A(男性)の視線の動きになります。会社概要を表すリード文に引っかかった視線が、ロゴやその下の写真へ流れていることが分かります。

図4:会社概要、ロゴ、写真がまんべんなく見られている

この企業の会社概要(リード文)では、「世界中の若者」「若い気持ち」など、新卒学生が求められる場があることを端的に表現しています。被験者の学生も「企業のメッセージが良かった」と答えていました。

給与よりも大事なもの

以前の記事で、「転職サイトでは、職種と給与の情報を拾い読みする」という結果が出ましたが、新卒サイトでも同じなのでしょうか。

転職者同様、どの新卒学生たちも職種を見ながら、応募するかしないかの判断をしていました。職種に関する文言(職種名/説明文)に関して、今回の被験者たちが注視していた文言は、「企画」「マーケティング」「クリエイティブ」といったライティング。同じ営業職でも「営業」だけだと視線は留まらず、「企画営業」と書いてあると視線が留まる場合も見られました。

その他、学生たちがよく注視していた事項は

  • 研修内容
  • 大学名別採用実績
  • 募集人数

です。研修内容については、給与よりもしっかりと確認されることが多く、これは転職者の取る行動との大きな違いです。

図5:視線の滞留時間をヒートマップで表した様子。長時間見られたところほど濃い赤色で表示されている。学生が「教育制度」をじっくり見ており、「給与」は確認程度であることがわかる

「大学名別採用実績」「募集人数」について、5人中4人の学生が、「自分の大学が載ってなかったら無理なのかなと思う」「募集人数が少なかったら無理なのかなと思う」と発言していました。無理にチャレンジをするよりも手堅く就職活動をしたい、という傾向の表れでしょうか。

「学生目線>企業目線」でサイトを作る

以下、今回のテスト結果と考察をまとめました。

新卒サイトを作る際に、どうしても「企業目線」で「説明する」ことが多くなりがちです。ただ、より多くの学生にアピールしようとするのならば、「学生目線」で「伝える」ということを意識すると良いでしょう。

本コラムは、奥井がCNET Japanにて連載している「視線が明かすウェブ制作の常識・非常識」にて2009年4月16日に掲載された原稿です。

4月になり、街を歩くとフレッシュな新入社員の姿を見かけるようになりました。また、早い企業では翌々年度の採用活動について考える時期でもあります。

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