2023年7月1日、GoogleのWebサイト解析ツール「ユニバーサル アナリティクス(UA)」が新しいデータの処理を停止しました。今後もGoogleのサービスを利用してWebサイトの解析などをしていくには、これに代わるツールとして案内されている「Google アナリティクス 4 プロパティ(GA4)」を利用する必要があります。

GA4自体は2020年から提供されているため、UAとGA4を併用してきた方も多いでしょう。しかし、これまでUAをメインで活用していた場合は、GA4を本格利用するにあたって注意しておくべき点もあります。サイト運営者としてどんなことを頭に入れておけばいいのか、Google マーケティング プラットフォーム(GMP)のセールス パートナーであり、Google アナリティクス 360国内トップクラスの販売実績を持つリセラーでもあるイー・エージェンシーの林氏と荒巻氏にお話を伺いました。

■GA4の特徴と、従来のUAとの違い

――GA4はどんな特徴があり、従来のUAと比べてどこに違いがあるのか、教えていただけますか。

林氏:UAとGA4では、そもそも計測する概念自体が変わっています。UrchinをGoogleが買収しGoogle アナリティクスとしてリリースしたのが2005年と、非常に歴史があることもあり、Webを中心とした計測要件、計測設計になっています。対してGA4は、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットなど、さまざまなデバイスが普及していくなかで、ユーザーのそれらデバイス利用や行動変化にも対応できる仕組みになっています。これを「クロスデバイストラッキング」と言いますが、Webとアプリのユーザー行動をひもづけて見られるようになったことが大きな特徴と言えます。

データ事業本部データソリューション部カスタマーサクセス課 課長 林 紫織 氏

荒巻氏:もう1つGA4の特徴的なところとしては、UAのときは有料版でしか使えなかったBigQueryへのローデータのエクスポートが無料版でも利用できるようになったことが挙げられます。これによりGA4で計測した大規模データを詳細に、かつ高速に処理して分析することができます。GA4にはグラフ表示やレポート化の機能が標準的に用意されていますが、もっと高度に分析したい、自分たちで細かくカスタマイズして表示したい、他のデータと連携させたい、といったときに役立つものです。

――クロスデバイストラッキングはサイト運営者にとってはどんなメリットがあるでしょうか。

荒巻氏:たとえばECサイトを運営している場合、マーケティング施策やプロモーション施策を打つ範囲はECサイト内やSNS、他サイトの広告だったりします。従来はそれらを訪れたユーザーの行動を見て次の施策を考える、というのが基本でした。ところが最近はECサイトだけでなく、独自にスマートフォン用のECアプリを開発して運用しているケースも多くなってきています。

そこでGA4を活用すると、アプリでこういう使い方をしているユーザーは、サイトの方ではこういう購買行動をしている、といった行動分析が可能になります。GA4によってサイト内だけでなく、アプリなども含めた計測が可能になるわけで、サイト運営者にとっては打てる施策の幅が広がることが大きなポイントだと思います。

林氏:運用の観点で言いますと、これまでWebの担当者とアプリの担当者を分けている企業が多かったのですが、GA4をきっかけにWebとアプリの運用を統合していくような流れもありそうです。また、今まではUAの標準機能で自社サイトのデータを個別に分析していたところを、無料版のGA4でも利用できるようになったBigQueryへのデータエクスポートを活用することにより、統合的にデータ分析していくように変えることも可能になります。ユーザー行動の分析の仕方と合わせて、マーケティングの方向性を変えていくいいチャンスでもあると思っています。

■GMPのセールスパートナーに支援を依頼するメリットとは

――企業が御社のようなGMPのセールスパートナーに支援してもらうメリットとしては何が挙げられますか。

荒巻氏:まずは得られる情報量が増えること、そしてGoogle社と直接的にコミュニケーションを取れることです。GA4はまだ発展途上の部分もあり、日進月歩で進化しているのですが、今後どんな改善や追加機能があるのかといったロードマップのような情報を我々は持っています。お客様がデータ分析したり、施策を打っていこうとしたりするときに、我々のもつ情報をもとに最適な方法、最適なタイミングで提案が受けられる、というのは1つのメリットかと思います。

加えて、我々はGoogle社にお客様のご意見・ご要望を直接エスカレーションし、それに対する回答をフィードバックすることも可能です。そんな風にGoogle社の公式見解を正確に把握してお伝えできるのは、GMPのセールスパートナーならではと言えます。

データ事業本部データソリューション部データインテグレーション1課 課長 荒巻 裕司氏

林氏:UAやGA4はそれこそ大変多くの方が利用していますから、インターネット上には情報があふれていて、何が本当で、自社にとってどれが有益な情報かを判断するのが難しい場合があります。また、GA4の最適な運用方法が変わる可能性もありますので、それに合わせて自社の戦略をどう変えていくべきか、その都度正しい方向性で検討していく必要もあります。それが可能になるのが、私たちGMPのセールスパートナーに依頼するメリットでもあります。

――UAからGA4になったことで、GMPのセールスパートナーとしての役割や支援する内容などが変わったところはあるのでしょうか。

林氏:GMPのセールスパートナーとしてのスタンスが変わることはありませんが、GA4になったことで、お客様のデータ活用の幅をもっと広げ、私たち自身のできることの幅も広げないといけない、ということを自覚するようになりました。これまでの方法論に固執するのではなく、違う視点で見たときにもっとできることがあるのではないか、UAの運用方法を踏襲するのではなく、GA4ならではの新しい運用・活用方法を探っていった方がいいのではないかなど、考えるべきことがたくさんあります。

UAは10年以上前にリリースされたツールで、その後は言ってみればリフォームと増築を繰り返して機能を増やしてきたところがあります。GA4でそれがリセットされたわけですから、お客様のサイト分析やマーケティング戦略も一緒に基礎から見直せるいい機会です。そういった側面からも、私たちがきめ細かく対応しながら伴走できるのかなと思います。

荒巻氏:たしかに、どのお客様もいったんスタート地点に戻っているような状態ではあります。でも、そもそも何のために分析が必要だったのか、というところから改めて議論して、本当に意味のあるデジタルマーケティングの取り組みをお客様と一緒に歩んでいけるのはうれしいことです。我々がお客様の前に立って導いていくような役割は、これまで以上に重要になってきていると感じています。

■企業の目的に合ったパートナー選びを

――GMPのセールスパートナーに頼らず、企業自身がGA4を活用していくときのメリット・デメリットとしては何が考えられますか。

林氏:メリットで言うと、やはり直接コストが抑えられることだと思います。ただ、各機能の使い方やデータの意味、分析の方法など、わからないことがあったときに調べる時間が余計にかかりますし、わからないまま進めて後日確かめると正しく計測できていなかった、みたいなこともありえます。そんな風にアクシデントでリカバリーが必要になったときの手間を考えると、運用をGMPのセールスパートナーにお任せしてしまった方が結果的なコストは低く済みますし、実際に「最初からお願いしておけば良かった」というお声をいただくことも少なくありません。

荒巻氏:企業自身が学びながら使っていくことになると思うので、GA4に関する知識が身に付く、という点は利点になるのかなと思います。しかし、分析していくときに、この数字は本当に正しいのかどうか、といったデータ検証に時間を浪費し、本当に必要な分析にまで手が回らない、なんてことになる可能性もあります。お客様には本来の業務や必要な分析にのみ注力していただき、それ以外のことは我々のようなGMPのセールスパートナーにお任せいただいた方が、結果的に業務を効率良く回せるようになると思います。

――企業としては、運用などを支援してもらうGMPのセールスパートナーを探すとき、何を念頭に置いておくと良いでしょうか。

林氏:GMPのセールスパートナーは現在日本に9社あります。それぞれで得意分野が異なりますので、たとえば広告戦略を重視するなら広告に強いパートナーを、SEOを強化したいならそれに強いパートナーを、マーケティング基盤をしっかり作り上げたいということでしたらそれが得意なパートナーを、という感じで選択されると良いかと思います。

――その意味では、御社の強みはどういったところにありますか。

林氏:弊社は、GMPのセールスパートナーになった歴史も古く、Google アナリティクスに関する知識を豊富に有している人材が揃っています。また、弊社のお客様はECサイト、メディア、BtoB、人材、インフラ、送客ビジネス、メーカーなど、幅広い業種に渡ります。そのため、それぞれのサイトの目的に合った最適なGoogleアナリティクスの利用方法や設定方法について、豊富なナレッジを持っております。

豊富な知識と経験を元に、Google アナリティクスのデータをコアとしたデータづくりのプロフェッショナルとして、デジタルマーケティングの基盤構築やその活用を、貴社のビジネスに寄り添ってご支援できます。

GA4の周辺やIT関連の用語には難しいものが多く、日々技術も進化していて、キャッチアップするのは大変です。しかし、そうした専門的な領域であっても、弊社はお客様がわかりやすい平易な言葉でかみ砕いて伝えられる、というのを得意としています。マーケターかエンジニアかに関わらず、誰にでもわかりやすい言葉で説明できるところは弊社の強みではないかと思います。

■パートナーとともにビジネス成果を作るという1つの選択肢

――最後に、GA4を本格活用していこうと考えている企業に向けてアドバイスやメッセージがありましたら。

荒巻氏:順調にサイトやアプリが成長していけば、無料版のGA4だと何かと利用上限に達してしまうことが多くなります。外部ツールとの連携に制約が生じてしまったり、計測項目を増やせなかったりなど、自社サービスの拡大に分析が追いつかなくなることも考えられます。その場合、GA4の運用方法を工夫して無料のままでも使い続けられるようにするか、もしくは有料版に切り替えるか、というような判断を迫られるかもしれません。

その点、当社では他のお客様の実例も担当者レベルでしっかり把握していますから、それをもとに最適な運用方法などをアドバイスできます。ここまでは運用でカバーし、これ以上は有料版に切り替えるなど、他のお客様での例を参考に判断基準をお伝えすることもできますから、最小限のコストで必要十分なデータ分析が可能になるはずです。

また、UAとGA4はそもそも別のツールである、ということを理解していただくことも大事です。同じような計測項目なのに、UAとGA4とで数値に差があって悩んでしまうお客様も実際にいらっしゃいました。GA4はコンセプトの異なる新しいツールですから、その比較自体が時間の無駄にもなりかねません。データにこだわることは重要ではあるものの、データに囚われないようにすることはもっと大事だと考えていただければ。

林氏:UAとGA4とでデータの見え方が変わったために、上司に納得してもらえる資料が作れなくなった、というお客様もいらっしゃいました。同じ項目名でも計測要件が変わっていたり、わかりにくい項目があったりするので、その点を社内で指摘されがちです。しかし、それを改めて説明するのには時間がいくらあっても足りません。私たちの方ではそんな時のために、社内説得に役立つ資料や説明用のレポートなども用意していますので、お気軽にご相談いただければと思います。

お話を伺った方

株式会社イー・エージェンシー

データ事業本部データソリューション部カスタマーサクセス課 課長 林 紫織 氏(左)
データ事業本部データソリューション部データインテグレーション1課 課長 荒巻 裕司氏(右)

この記事の執筆

ITreview Labo編集部

ITreviewの記事編集チーム。ITreviewの運用経験を活かし、SaaSやIT製品に関するコンテンツをお届けします。

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