共感を売るECサイト

2012年9月10日 | 木村 祥一郎

前回のエントリーでは、次世代ECサイトに備わるかもしれないテクノロジーを取り上げたわけですが、今回はその真逆を取り上げてみたいと思います。

ここで紹介するECサイトには、最先端のテクノロジーが装備されてるわけでもないですし、人を魅了するような斬新なクリエイティブやインタラクションがあるわけでもありません。(といって、クリエイティブやインタラクションが駄目というわけではないです。それが「主」ではないというだけ。)

販売されてるものが、とてつもなくユニークで、他では手に入らないものでもなければ(一部、モノとしてはそこでしか手に入らないものがありますが、そのモノの機能はどこでも手に入れれます)、誰か影響力のある有名人やタレントが宣伝してるわけでもありません。

しかし、これらのECサイトには、人を惹きつけ、人にそのサイトが提供する商品を買いたくさせる「何か」があります。商品の購入という行為を通じて、そのサイトと関わりあいを持ちたい、そのサイトを、その会社を、その団体を応援したい、と思わせる要素があります。

それは単に、SEOが素晴らしくて集客力があるとか、ソーシャルメディアの活用がうまくて、着実にファンを増やしてるとか、そういう局所的なものではありません。それが「何」なのかということを、具体的に説明することは、すごく難しいことです。でも、まぁ、それは人でも同じではないかなと思います。一生懸命になってる人や、素直な心持ちの人、人を元気にさせてくれる人は、信頼できるし、応援したくなる。困ってる時は助けたくなる。そういうものじゃないかと。そういうものは、なにか部分的なところや局所的な行動やらに還元できるものではないと思うのです。

ニシアワー ぐるぐるめぐる、西粟倉村の森と繋がるショッピングモール|nishihour.jp

岡山件西粟倉村の産の間伐材や農産物を販売している西粟村のポータルサイトです。僕はこのサイトを知るまで、西粟村のことなんてこれっぽちも知りませんでした。しかし、このサイトを通じて、西粟村のことを知り、そして西粟村のことが気にかかるようになりました。

それは、この村の志に共感したからです。

 

志や構想が文脈として語られている 

人口1600人の村の挑戦|nishihour.jp

nishihour.jp ≫ 自立の道を選択した村

こういったコンテンツを読むと、純粋にその構想や取り組みを応援したくなりました。

ニシアワーで販売されてる家具や雑貨などはそれはそれで確かに魅力的なものも多いのですが、でも、無垢ヒノキで作られてるとか、西粟倉の家具職人が設計し、西粟倉の大工が製作して作ってる純国産・西粟村製品だとかっていうことそれだけでは、そこまでここが提供している商品に心が惹かれたかというと、多分、僕の場合は、そうでもなかったと思います。

これらの商品に、先のような大きい志や構想が文脈としてかぶさることで、その商品は、より一層の魅力を持って輝き始めます。その志や構想に一票を投じるという意味合いで、何か商品を買えないかなと、考えている自分がいたりして、それは、欲しいものを探す、という姿勢ではなく、西粟村を応援したい、このサイトを応援したいという気持ちだったりしするのです。(ただ、残念ながら、まだここで僕は商品を買ったことはないのですが….)

北欧雑貨と北欧食器の通販サイト| 北欧、暮らしの道具店

このショップを知ったのはセミナーからでした。実際に、そのセミナーに行ったわけではなく、そのセミナーについて書かれたブログやメディアの記事から知ったに過ぎないので、ちゃんと把握してるかどうかはわからないのですが、それでもこのセミナーの資料や、ブログ等から、僕はものすごい刺激を受けました。

面白いから訪れたくなるようなサイト

3月3日 第29回WebSig会議『効率化だけではない!中小~中堅ECサイトの成果を上げる「メディア編集力」とは』受付開始! – WebSig24/7公式ブログ

第29回WebSig会議「効率化だけではない!中小~中堅ECサイトの成果を上げる「メディア編集力」とは」

セミナーの中でも言及されていましたが、このショップが意識してるのは「サイトのメディア化」ということです。ECサイトをモノを買う目的で訪れる場所ではなく、そのサイトが面白いから訪れたくなる、そんな場所を目指すという考え方は、このサイトそのもので体現・実践されています。

確かにこの世界が好きな人は、このサイトを知ってしまうと、毎日ちょっと覗きに来たくなるのではないでしょうか。

また、展開されているコンテンツ1つ1つがすごくユーザーに近い立場で作られているということも、このお店の魅力の一つです。単なる憧れや夢みたいな世界ではなく、生活の延長として、自分事として捉えられるような世界が表現されています。

 

スタッフ自身によるブログ

スタッフ日記 | 北欧雑貨、北欧食器のネットショップ | 北欧、暮らしの道具店のブログ

スタッフの皆さんのブログですが、スタッフ自身が商品を実際に使ってる様子や、普段の生活が垣間見れて、それが見る人の共感を呼び寄せます。スタッフ自身がその商品に惚れ込んでるんだなということがわかります。

北欧家具を扱うお店は、当然、ここだけではありません。商品点数がもっと多い店もたくさんあるでしょう。もっと安く販売してるお店もあるでしょう。しかし、このお店が他と決定的に違うのは、まず、ユーザーとのエンゲージメントということを最優先に考えていることではないかと思います。今、流行りの「インバウンド・マーケティング」も、ほとんどはB2B系のストーリーの中でつかわれますが、彼らがやってるマーケティングも、まさにインバウンド・マーケティングではないでしょうか。

コンテンツを作ることは、「購入」という一点を目的にしたものではなく、まず、このお店にとって、お客さんになりえる層の興味や関心を惹きつけ、エンゲージメントを得ることが目的になってます。そして、そういったコミュニケーションの中から、ユーザー側に欲しい気持ちが芽生えたり、何か必要になつたり、衝動的に欲しくなったりが起きて、購買に繋がっていくというストーリーが成立してるのです。そして、コンテンツを作り続けた結果、それはSEOにも良い影響が出たり、ということがありますが、この順序はあくまでもコンテンツ→SEOです。SEOありきでコンテンツが展開されているのではない。そこも重要なポイントだと思います。

ソファ専門店 NOYES

こだわりのソファを販売しているサイトです。ソファや家具のECサイトは、数多くありますが、僕がこのサイトが特に気に入ってます。それは、このサイトから、この会社のこだわりや大事にしてることが伝わってくるからです。そのこだわりの伝え方では、このサイトは多分、ソファのECサイトでは抜きん出てるんじゃないかと思います。

あいにく僕の家で使えるようなソファはないので、買うにまでは至ってませんが、ソファ購入を検討している人がいると、僕はこのサイトを教えます。買う買わないは、本人次第ですが、こんないい会社があるよと、ついつい教えたくなるのです。

 

自分たちのこだわりを伝える 

ブランドコンセプト|ソファ専門店 NOYES

「NO」「YES」にこめた思いが綴らています。
ソファ職人のソファ作成動画やリレー形式での職人紹介、ソファー職人のブログなど、様々な形式や表現で、自分たちのこだわりを伝えようとしています。

ここで販売されているソファは、決して安いものではないですが、これだけのこだわりや、意気込みで迫られたら、多少高くても、やっぱり「いいもの」が欲しいなという気になってしまいます。

実際、うちのスタッフの一人はここのソファを買ったようで、話を聞いてみると、まるでこの会社の宣伝マンかのように、いかにそのソファが素晴らしいかをとうとうと語り始めるのです。これだけ煽りながら、実用でもその期待を上回るというのは、本当に凄いことです。

通販生活R

説明するまでもなく、「ピカイチ辞典」や「通販生活」などの通販雑誌を展開しているカタログハウスさんのECサイトです。カタログハウスのECサイトが、他の総合通販系のECサイトとは決定的に違うのは、カタログハウスが自分たちが気にいったもの、そしてしっかり審査して、自分たちが定めた基準をクリアした良品を自信を持って販売しているというところです。

今で言うところの所謂キュレーションコマースとでも言うべきものの原点でしょうか。

通販から無脈々と受け継がれているカタログハウスのコンセプトは、今も顕在で、おそらく利用者の多くもカタログハウスが選んできたものに対しての信頼は凄いものがあるのではないでしょうか。

1品1品の商品の語り方、魅せ方は本当にうまくて、特に欲しいとも思ってなかったものも、このサイトを見てると欲しくなってしまいます。

石けん百貨~国内外の優れた石鹸などの販売・通販

私たちもお仕事として関わらせて頂いている石鹸や洗剤、その他その日用雑貨などを販売するECサイトです。コンセプトは安心・良質な石鹸を中心とする各種雑貨類を紹介するというもの。使い勝手やデザインだけでなく、原料や成分、製法にいたるまで細かな項目を厳しく審査した商品だけが紹介されています。

また、彼らが作っている様々なコンテンツの品質や充実ぶりも、似たような競合他社が追いつこうと思っても追いつけないようなレベルにあります。

 

ユーザーのためのコンテンツ

石鹸百科

石鹸の基礎知識から使い方まで、石鹸生活の総合情報サイトです。

読んで美に効く基礎知識/お肌とコスメの科学

お肌とコスメについてきちんとした情報を伝えようという目的のサイトです。

せっけん楽会 – 石鹸生活の口コミサイト

石鹸生活を愉しむためのコミュニティ。ユーザー同士での積極的な意見交換・情報交換が行われています。

石鹸百貨がすばらしいのは、こういったコンテンツを、純粋にユーザーのため、ユーザーの利便性の向上や、正しい知識を得てもらいたいという、熱い思いに突き動かされて生み出し続けてるということです。そこには、このコンテンツで売上をあげようとか、SEOになるといいなというような動機がほとんどありません。(もちろん、結果的にはそこには繋がげていく必要があるので、最低限のことは意識されていますが)

こういう活動を通じて、多くの人は、石鹸百貨に愛着を抱き、石鹸百貨で売られている商品に信頼を寄せ、リピーターになっていくのだと思います。

どうですか? 皆さんにもお気に入りのショップが1つはあるのではないかと思います。

必要なものを買うという機能だけに特化したショップもいいですが、特に買いたいものも、今すぐ必要なものもないけど、ついつい覗きに行きたくなる、ふらりと立ち寄りたくなる、そんなショップがあるというのは、何かすこし心に余裕がある気がします。

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ライター

テクノロジーとかマーケティングとか文学や哲学が好きです。 個人のブログはこちら( papativa.jp )。

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