SEOのトレンドを追う(1)「アクセスログ編」

2005年1月27日 | 広報・PR・イベント運営担当

2005年01月27日

SEOのトレンドを追う(1)「アクセスログ編」

田中 亮
イー三六五株式会社
http://www.submit.ne.jp/

初診ではまずログを

 あるECサイトの売上が伸び悩んでいるとします。リアルの店舗での売上は上々なのに、ウェブでの売上がぱっとしない。じゃあサイトにテコ入れをする必要がある、となるわけですが、それだけの情報では何を改善すればいいか分かりません。

 「腹が痛い」とだけ言われて病名が特定できる医者がいないように、一概にSEOといっても単一の処方箋で解決しません。検索結果はどうなのか?コンテンツやユーザビリティなどの内的要因が原因なのか?あるいは単純に競合が強すぎるのか?サイトによって抱えている症状は色々あり、それぞれに理由が存在します。

 「全ての事象には原因と結果があり、そこには運とか偶然などは介在しない」と言った哲学者がいましたが、Googleの検索結果順位にも必ず理由があります。「なんか順位低い」とかそんなことはあり得ないのです。冒頭の例であれば、リアルの店舗で売上は好調なのですから、商品自体には問題ないはずです。だとすると、サイトが問題を抱えていることは明白なので、まずは現状の問題点を洗い出すことから始めなくていけません。

 サイトの現状を測るには、アクセスログを見るのが最も手っ取り早い方法です。ページ毎の訪問者数、滞在時間やユーザーの行動などを見ればサイトの問題点は一目瞭然です。ログを元に問題点をピックアップしていきます。

 その結果、「ナビゲーションに問題があるので、ユーザーが迷子になっている」といった事実が浮かび上がるかもしれません。あるいは「目的のコンテンツではなかったから直帰した」、とランディングページに問題があることを示唆するデータが出てくるかもしれません。

 SEOの初診は、アクセスログから始まるのです。

どのようにログを見るか?

 収集したアクセスログの中から分析すべき指標は、大まかに以下の4つに分類されます。

(1)訪問者数・ユーザーセッション数・ページビュー数

(2)ランディングページ

(3)滞在時間・閲覧ページ数

(4)ユーザー導線

 まず(1)ですが、訪問者数にしろ、ページビューにしろ、単純に数が多ければいいという訳ではありません。そのユーザーの訪問が「意味のある」訪問かどうかを分析する必要があります。

 あるページの訪問者数が多かったとしても、そこで直帰しているユーザーがほとんどだった場合、そのページが大半のユーザーにとって目的のコンテンツではなかったことを意味します。そのとき、たまたま検索語としてのニーズが高く、迷い込んで来た人が多かったため、一時的に直帰率が高くなってしまった可能性も考えられますので、日毎の数ではなく、継続的に計測すべき指標といえます。

 次に(2)のランディングページですが、どのページが入り口となっているかを分析するうえで注意したいのは、トップページ以外の訪問者数です。検索エンジンの精度向上にあわせて、ユーザーにとっての入り口であるランディングページは細分化されている傾向にあります。現在ではトップページを経由してサイトを訪問するユーザーは全体の30%程度といわれています。また、トップページのみ見て帰ってしまうユー
ザーの数も増加しており、トップページの持つ意味自体が変化しているといえます。

・トップページの役割に変化 - RedSheriff Index より考察
http://japan.internet.com/wmnews/20040330/5.html (japan.internet.com)

 このように、現在は全てのウェブページが入り口であると捉える必要があります。ランディングページがどこなのか、どんな検索ワードを辿ってこのページに来たのか、といった要素からユーザーのニーズを分析するべきです。ユーザーのニーズからかけ離れたコンテンツでは購入へと誘導することは難しいため、これらを掴むことは、コンバージョンまでの第一関門クリアにつながります。

 (3)(4)についても「いかにユーザーを脱落させていないか」を考慮して分析する必要があります。商品の特性によっては、1ページあたりの滞在時間が短くても、閲覧している商品ページが多ければユーザーにとって関心のあるコンテンツと解釈することができます。しかし、関連性のない閲覧ページ数が多いと思ったらナビゲーションの不備が原因でユーザーが迷子になっていた、ということも考えられます。

 ナビゲーションの不備を回避するためには、実際にユーザーがどのような行動を取るかを商品毎に想定し、そのパターンから大きくかけ離れた導線であればサイトの構造を見直す必要があります。それぞれのページがどのような経路で訪問されているかを分析し、ページ毎の役割を再確認することで、導線分析を行います。

SEO実施の限界は?

 このように、アクセスログを通じてユーザーのニーズやサイトの改善点を見つけることがSEOの本質に近いといえます。GoogleやYSTのアルゴリズムは「人間だったらどのような検索結果を求めるか」という考えに基づいて調整されているといわれています。小手先のテクニックで検索エンジンに対抗するのではなく、検索エンジンとユーザー双方に最適なコンテンツを提供することが本当の意味での「検索エンジン最適化」なのです。

 では、全てのサイトでSEOが可能なのかというと必ずしもそうではありません。HTMLソースをどうこうするというレベルでは解決できないケースも数多くあります。

 例えばサイト構造やレイアウトは全く変えてはいけないというサイトだと、SEOに大きな制限がかけられてしまいます。また、無数にあるターゲットワードを全てフォローしたいというクライアントのニーズもあります。

 従来のSEOでは、「無理」とも思えるこれらのリクエストを簡単にクリアしてしまうのが、近年注目が高まりつつある「サテライトサイト」の構築です。

 たとえば、何らかの理由で全く検索結果の上位に来ないサイトがあるとします。そのメインのサイトの代わりにランディングページとしてユーザーを獲得、本体へ誘導するためのサイトがサテライトサイトなのです。

 自由な動きが取れない本体の代わりに、SEOに特化したサイトを構築し、検索エンジンから本体への導線を確保しようという試みなのですが、すでに大企業などでも導入されているこの手法について、次回その有効性を検証します。

PICK UP

広報・PR・イベント運営担当

ライター

おもてなしを科学するイー・エージェンシーでは、クロスデバイス分析によるユーザー単位の分析やオンラインオフラインを横断した分析など次世代の分析をサポート。また分析データを元にしたABテスト支援から、EC領域での購買、行動データを活用したレコメンドシステムなどを提供。 お問い合わせはこちらにどうぞ。

お問い合わせ

サービスに関するご相談は
こちらよりお気軽にお問い合わせください。

e-Agencyの様々な情報をSNSでお届けします!